ピロリ菌について

はじめに

日本は、胃がんの多い国であります(図1参照:2002年度の統計データでは租発生率が世界一)。
胃がんは、ほとんどがピロリ菌感染に原因とするものであります。
社会整備(上下水道など)に伴い、若い人たちの感染率は低下していて、日本全体の胃癌死亡者数も減少しつつありますが、高齢者の胃癌死亡者数は現在も減少していません(図2参照)。

除菌治療により胃がんの発生を減少させることができるのですが、わが国では2001年より胃潰瘍、十二指腸潰瘍の患者さんの保険による除菌治療ができるようになりました。
2012年に胃がんの内視鏡治療後、マルトリンパ腫、特発性血小板減少症の患者さんに適応が追加され、2013年2月には内視鏡検査において胃炎の確定診断がなされた患者に適応が拡大されました。
つまり、現在では、ピロリ感染がある人が、内視鏡検査をすれば保険で検査治療ができるようになったのです。

除菌治療は若いうちにすれば胃癌の予防効果が大きいのですが、高齢になり、胃の粘膜の慢性的変化が進行した状態(萎縮性胃炎といいますが)では少なくなってしまいます。
できるだけ早期に除菌治療をすることが理想です。

しかし、これまで、除菌治療せず高度の萎縮性胃炎になっている人でも、除菌による胃癌の予防効果は期待できます。
除菌の治療の副作用が心配で治療を躊躇されている方もいると思いますが、副作用は高齢になると多くなるというものではありません。

図1:各国の胃癌の発生率(10万人に対する人数)

図1:各国の胃癌の発生率(10万人に対する人数)

図 2:日本の各年代層の胃癌による死亡者数

図2:日本の各年代層の胃癌による死亡者数

図1
GLOBOCAM 2002 より編集

図2
独立行政法人 国立がん研究センター がん対策情報センター
Cancer Static 2013より編集

ピロリ菌とは?

長さは4ミクロン(4/1000mm)らせん状のグラム陰性桿菌で、2~3回ゆるやかに右巻きにねじれています。

片側(両側の場合もある)に4~8本のべん毛が生えています。
以前は、胃の中は強い酸性で、抗酸菌である結核菌以外の細菌はいないと思われていましたが、1983年に西オーストラリアのWarrenとMarshallによってヒトの胃粘膜より分離培養され、胃十二指腸潰瘍や慢性胃炎との関連が明らかにされました。

図:胃の粘膜の表面中のピロリ菌  矢印の部分が針です。針を出して毒素を胃の粘膜に注入しています。

図:胃の粘膜の表面中のピロリ菌 矢印の部分が針です。針を出して毒素を胃の粘膜に注入しています。


A novel sheathed surface organelle of the Helicobacter pylori cag type IV secretion system
Manfred Rohde, Molecular Microbiology (2003) 49(1), 219–234

ピロリ菌に感染すると

胃がピロリ菌の感染を受けると、表面の軽い胃炎からはじまり、胃の粘膜(胃の表面の細胞)に炎症を起こし、次第に胃の粘膜は萎縮(薄くなる)てしまいます。
その間、鳥肌状胃炎、十二指腸潰瘍、胃潰瘍、胃癌など、起こすことがあります。

通常は、ピロリ菌は、幼児の時に感染します。
子供のころは、ほとんど症状がないのですが、時として、腹痛などの症状を訴えることもあります。
10代になり、鉄欠乏性貧血になることがあります。

内視鏡検査をすると、鳥肌状胃炎(図8)の所見を有することがあります。
感染している子供は、若干栄養状態が感染していない子供に比べ悪く、有意に体重が少ないようです。

10代から20代の女性の感染者に、鳥肌状胃炎(図8)が多く、時として、潰瘍や腹痛を伴います。
感染のない胃は細い胃の襞があり、粘膜もすべすべした感じです(図4)。

感染がありダメージの少ない胃は、襞が多少太くなったり、白い粘液が付着しています(図 5)。
年月を経て、胃の粘膜のダメージが進むと胃の襞が太くなり、炎症のため粘膜表面は赤くなり、むくんできます(図6)。

胃の粘膜が、炎症により荒廃すると、胃の正面には正常の胃粘膜はなくなり、ピロリ菌が感染し続けることができなくなります(図7)。
胃の襞はなくなってしまいます。

鳥肌状胃炎はピロリ菌の感染により、胃の粘膜の中のリンパ節が大きくなり、あたかも羽根をむしった後の鳥肌に似ているので名付けられた胃炎です。
胃癌のリスクが、鳥肌状胃炎のないピロリ菌感染者にくらべ、64倍も多かったというような報告がありますが、若い人のピロリ菌感染者に見られ、ピロリ菌に対する体の免疫反応によってできます。除菌すると2年ぐらいでなくなります。

図:4   ピロリ菌感染の無い健康な胃

図:4 ピロリ菌感染の無い健康な胃

図:5   ピロリ菌感染のある胃

図:5 ピロリ菌感染のある胃

図:6   ピロリ菌感染し、ダメージが大きくなった胃

図:6 ピロリ菌感染し、ダメージが大きくなった胃

図:7   粘膜が荒廃し、ピロリ菌が陰性になった胃

図:7 粘膜が荒廃し、ピロリ菌が陰性になった胃

図:8   鳥肌胃炎

図:8 鳥肌胃炎

胃の病気とピロリ菌

ほとんどの十二指腸潰瘍、胃潰瘍の原因はピロリ菌で、日本では2000年より、これらの病気に限り、ピロリ菌の保険診療が認められました。

日本では、他の国々と比べ胃がんが多く、そして、日本の胃がんのほとんどはピロリ菌感染によるものです。
日本、中国、韓国など、東アジアに分布するピロリ菌は、胃がんを起こしやすいタイプの菌であることが研究の結果明らかになっています。

ピロリ菌は胃の粘膜に付着し、胃の粘膜に毒素を注入するのですが、東アジアのピロリ菌は、ひじょうに毒素が強く、癌を引き起こしやすいからです(図参照)。
胃がんとピロリ菌感染の関係が明らかにされ、2013年2月から内視鏡検査で確認された、ピロリ菌の慢性胃炎に対して、保険診療ができるようになりました。

胃の粘膜の表面中のピロリ菌  矢印の部分は針です。針を出して毒素を胃の粘膜に注入しています。

胃の粘膜の表面中のピロリ菌 矢印の部分は針です。針を出して毒素を胃の粘膜に注入しています。

 


A novel sheathed surface organelle of the Helicobacter pylori cag type IV secretion system
Manfred Rohde, Molecular Microbiology (2003) 49(1), 219–234

胃の病気以外とピロリ菌

小児、若年者の鉄欠乏性貧血や栄養不足、特発性血小板減少症(ITP)と関連性があるとされ、そのほかに口臭、線維筋痛症(FM)および慢性疲労症候群(CFS)、慢性蕁麻疹、動脈硬化による心疾患、アルツハイマー病、ギランバレー症候群などとも関連があるという論文が出ています。特発性血小板減少症(ITP)は保険診療での治療が認められていますが、日常診療ではなかなかお目にかかれません。

機能性デスペプチアと言って、潰瘍ではないのに胃が痛くなる症状が頻発することがあります。ピロリ菌が感染している人では、除菌治療すると改善する場合があります。

逆流性食道炎は胃酸の逆流によって、出ますが、ピロリ除菌治療後に悪くなる人もいるし、よくなる人もいます。除菌治療すると胃酸が多くなるのですが、胃の動きが良くなるので、食道炎が改善することもあります。

除菌後便通が良くなったり、悪くなったりすることがあります。これは、除菌治療時に抗生剤が腸内細菌に影響し腸の細菌叢を変えてしまうからです。

日本人のピロリ菌感染率

一般的にピロリ菌は、小児の頃に感染します。
50代以上の人は子供のころに、環境(水や食物)から感染を受けていたと思われます。
高齢者のほとんどの方は、感染しているか、かつて感染していたと思われます。

現在は上下水道の整備に伴い、井戸水や川の水からの感染はなく感染率は減少しているので、若年者の感染は減少しています(10歳未満で、5%ぐらい、10代で10%ぐらい)。
それでも感染があるのは、家族内で特にに母親から感染を受けているようです。

ピロリ菌感染と胃がん

日本人の胃癌は、ほとんどピロリ菌の感染に原因があります。

日本人の胃癌の中の90%は、明らかにピロリ菌感染が原因で、9%がピロリ菌の感染は無いが、かつて感染があって因果関係があります。
ピロリ菌に関係しない胃癌は、わずか1%であるということです。
現在日本では、胃がんが少しずつ減少しています。
これは、若い人たちのピロリ菌感染者が少なくなり、若年者、壮年期の胃癌の発生が少なくなったからです。
しかしながら、高齢者の胃がんは依然と増加しています(図参照)。

図:独立行政法人 国立がん研究センター がん対策情報センター Cancer Static 2013 より編集

図:独立行政法人 国立がん研究センター がん対策情報センター Cancer Static 2013 より編集

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