ピロリ菌検査

内視鏡以外でのピロリ菌検査

ピロリ菌は、内視鏡検査をしなくとも感染診断はできます。
内視鏡以外でのピロリ菌検査は、以下であります。

尿検査

尿中の抗体を検知しますが、血中抗体が低値の人は偽陰性になりやすいです。

便検査

便の中に混じっているピロリ菌の一部のタンパクを検出します。
大腸癌検査の便潜血検査と同じ要領で便をとります。偽陰性が多いようで、陰性でも他の検査法で確認する必要があります。
迅速キットもありますが、本院は検査機関で測定しますので、結果が出るまで7日間かかります。

呼気テスト

4時間以上絶食した状態で検査をします。
検査の薬をのむ前後で、呼気を採取しそれを検査します。
ピロリ菌の感染診断で、もっとも正確な検査です。
本院では、ピロニックという薬剤を使い呼気を検査機関で測定しますので、結果が出るまで約14日間かかります。
他の医療機関で使われているユービットよりも精度が良いようです。
特にわたしの経験上、除菌判定時のピロニックによる呼気検査の精度は高く信頼がおけます。

血液検査

血液中のピロリ菌に対する抗体価を検査します。
もっとも用いられている栄研の検査では、カットオフ値が10U/mlでそれ以上が陽性となりますが、このカットオフ値以下での感染者が多いようです。
検査値が3未満以外では、感染の可能性、または既感染の可能性があるので、他の検査で確認する必要があります。

3U/ml未満である場合、感染はないと判断してもいいと思われますが10U/mlまでは感染の可能性があります(下の資料をご参照のこと)。

外注による検査になりますので、結果が出るまでに4~5日かかります。
ABC検診で使用されています。

ペプシノーゲン検査

血液により胃の萎縮(ピロリ菌感染の結果、胃の粘膜が変化をすること)を検査します。
採血後に検査機関での検査になりますので、結果が出るまでに4~5日かかります。
こちらもABC検診で使用されています。

胃酸を抑える薬を内服していると検査値が大きくなってしまうので、検査する際には、逆流性食道炎の薬(PPIなど)を前もって中止する必要があります。

陽性の方は、胃の粘膜の萎縮があります。

ABC検診

血液検査(抗体検査とペプシノーゲン検査を組み合わせ胃がんのリスクを判定します。)

胃がんになる人はほとんどが、ピロリ菌が感染しているかまたは、過去に感染があった方です。
以前はほとんどの方がピロリ感染しており、バリウム検査が検診に有用でありましたが、現在のようにピロリ感染者が少なくなっている中、ピロリ感染していない検診者に胃がん検診のためのバリウム検査は、かえって放射線被爆のデメリットのほうが大きいと思われます。
ピロリ菌感染がなく胃粘膜の萎縮のないA群と判定された方は、バリウム検査の必要はないと思われますが、現在の検診で使われている、抗体検査は先に述べたように偽陰性が多く問題があります。

  • ピロリ感染がなく、胃の萎縮のない人がA群
  • ピロリ感染があるが、胃の萎縮のない人がB群
  • ピロリ菌感染があり、胃の萎縮もある人がC群
  • 萎縮が進行し、ピロリ菌がいなくなった人がD群

と、判定され、ピロリ菌の治療をしないと、感染している人はB群からD群に進んでいきます。
下にあげた内視鏡の写真でA群が図4、B群が図5、C群が図6、D群が図7に当たります。

A群は胃がんになる人はありません。
BからD群になると胃がんのリスクが高くなります。

A群やD群と診断された方で、ピロリ抗体価が3未満の人は、真のA群もしくはD群なのです。A群の人は安心していいと思います。D群で抗体価が3から大きい方はピロリ感染の可能性がありますから他の方法でピロリ検査し陽性なら除菌治療が必要です。

  • 図4 A群

    図4 A群

  • 図5 B群

    図5 B群

  • 図6 C群

    図6 C群

  • 図7 D群

    図7 D群

これまでABC検診を受けた方は、検査票の抗体価を今一度チェックしてください。

AやD群と診断された方でも、抗体価が10以下で抗体価が高い人(3未満以外)は、抗体価以外の別の方法でピロリ菌の再チェックが必要です。

  ピロリ菌感染
(-)
ピロリ菌感染
(+)
ペプシノーゲン
(-)
A群 B群
ペプシノーゲン
(+)
D群 C群

「認定NPO法人 日本胃がん予知・診断・治療研究機構」によるABC検診の説明はこちら

ピロリ菌抗体価についての資料

ピロリ菌抗体価について

数年前学会に発表したものでありますが、現在使われているカットオフ値では約1割の人がピロリ感染していても陰性になってしまいます。
日本ヘリコバクター学会でも、医師会を通じてこの検査値について注意を喚起しております。

呼気検査を受けられる患者様へ

  • 呼気検査とは、ピロリ菌の除菌薬内服後1ヶ月以降に、除菌ができたかどうかを調べるために行います。
  • 検査薬を飲んだ前後の呼気を採取する検査です。

注意点

  • 検査当日のお食事は、検査の4時間前までに済ませて下さい。
  • 水と日本茶は検査直前まで飲んでも構いませんが、ジュースは控えて下さい。
  • 検査前2週間は、抗生剤、PPI(食道炎のお薬)、LG21(明治のヨーグルト)は摂らないで下さい。

内視鏡でのピロリ菌検査

内視鏡検査時にする検査として迅速ウレアーゼ検査、組織検査、培養検査などがあります。
内視鏡検査にて胃の粘膜をとり検査をするのですが、ピロリ菌に感染していても、取った胃粘膜のところにピロリ菌がいないと陰性(偽陰性)になります。

迅速ウレアーゼ検査

胃の粘膜を採取し薬剤につけると、ピロリ菌がいると薬剤の色が変化します。
結果は30分ぐらいで出ます。

培養検査

胃の粘膜に付着しているピロリ菌を培養し、除菌治療で使われる抗生剤が効くかどうか検査します。
近年、保険診療の1次除菌薬に使用されているクラリスロマイシンに耐性菌が増加しています。
耐性菌がわかった場合、1次除菌で使用するクラリスロマイシンではない除菌薬(2次除菌薬)を使用します。
感度が高くなく、検査日数が長いのであまり使用されません。

組織検査

生検した組織中にピロリ菌が見られることがあります。
組織を特殊な染色法で染めなければ正確な診断ができません。
いずれの検査も、生検した粘膜の部分にピロリ菌が感染していないと陽性にならないので、正確に診断するには胃の粘膜の数か所から生検しなければなりません。通常の細胞検査(H/E染色)ではピロリ菌かごみなのかわからないので、正確に診断するには特殊染色が必要です。
1つの生検でピロリ菌が陰性でも、感染している可能性があります。

組織検査の時に見られるピロリ菌

組織検査の時に見られるピロリ菌ごみなのかピロリ菌なのか鑑別が困難である。
正確には、特殊染色が必要である。

トルイジンブルー染色で組織を見た場合、ピロリ菌の細長い菌体が観察できる。トルイジンブルー染色で組織を見た場合、ピロリ菌の細長い菌体が観察できる。

胃がんは防げる?

ピロリ菌の除菌治療は、7日間除菌薬を内服することで8割以上の方が菌を取り除くことができます。
除菌に失敗した人のうちで、2回目の除菌で9割が除菌できます(PPIの代わりにタケキャブという薬を使用すると99%の除菌成功率です)。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍の再発は、明らかに防げることができますが、胃癌を予防できるでしょうか。

2001年、日本の当時呉共済病院の上村先生によりピロリ感染と胃がんに関する研究が発表されました。
上村らは、内視鏡の早期胃癌治療を行った人たちをピロリ菌の除菌した人としない人に分け、5年間内視鏡検査をし、除菌治療をした65人は、胃癌の再発はなかったが、一方、除菌しなかった67人のうち10人から胃癌が見つかりました。

下のグラフは北大の浅香先生らにより、2008年ランセットに発表された研究結果です。

早期癌で治療した人544人を無作為に除菌した人たち(Eradication)と除菌しない人(Control)にわけ、3年間の追跡検査をしたものですが、除菌しない人から24人の胃がんが見つかり、除菌した人からは9人でした。除菌治療により、約3分の1に癌の発生がおさえられています。

図:Fukase K. : lancet 372, 392, 2008

図:Fukase K. : lancet 372, 392, 2008

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